ビーズと私の好きな  モノ・コト
by mici_no_suke
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31


無 常

きらきら晴れた数日前は、ちょうどよい自然光を使って微妙な色遣いのビーズを
手がけたが、今日のような雨の日はモノトーンの作品を‥。
白い真珠と黒い真珠。真珠といってもガラス製だが、まろやかな光だけを重ねる
モチーフをひたすら作る。手を動かす。全体をどうまとめるか、考えは決まって
いないが、ひたすら作る。「無常」という言葉が心をよぎる。しきりに‥。

朝、最近の習慣で「希望の牧場」のライブカメラを開いてしまった。
(ああ‥「ふくちゃん」はもう死んだんだ‥)
昨夜、牧場長の吉沢氏は、寒い夜にいつもしていたように「ふくちゃん」に
毛布をかけてやっていた。頭だけ出してすっぽり毛布でくるまれた姿を観て、
泣いた。
そのあと吉沢氏は大きなシートで全身をふんわりと覆い、いつも水を入れていた
バケツをかたわらに置いてやった。このバケツ‥というか洗面器みたいに見える
のだが‥は「ふくちゃん」が保護されたときの写真に写っている。こちら(*)
寒さよけにブルーシートをかぶせてもらっている顔の近くに、洗面器。そして
そばに干し草らしい乾いた草がひとかたまりと、スポーツ飲料のペットボトルが
10本ちかく立っていた。きっと原発の作業員さんたちが置いてやったのだろう。
やさしい人たちだ。
夜更けて‥吉沢氏が再び来て、数本の花をシートの上にそっと置いた。
警戒区域の浪江町に開いている花屋はないだろうに、どこで調達したのだろう。
やさしい人だ。

今日は今まで「ふくちゃん」はそのまま。シートの下で眠っている。
ときおり牛たちがのぞきに来る。お別れに‥なんていうのは、ちょっと擬人化
しすぎた考えだろうが、でも牛ってけっこう好奇心豊かみたいだね。
そんな風景を[窓]越しに観ながら「無常」についてずっと考えていた。

「無常」‥宗教用語としての意味はよく知らないが、生滅・変化するいっさいの
もの。儚いもの。‥‥儚いって、にんべんに夢って書くのだね。夢を観るのは
人間だけか? それってちょっと傲慢じゃないのか?
なんか、ちょっとしたことにも突っかかりたくなるぐらい腹立たしいのは、
「ふくちゃん」の死がとても残酷な「無常」に想えるからだろう。
そして一日中暗い、今日の雨。

「ふくちゃん」の亡骸はシートがかけられて、小さな祭壇のように見える。
お葬式、やるのかな? いつかな? 畜主さん、来るのかな?
「無常」について考えて、若いころ読んだSFを読み直して(SFなのだが魂と
無常に関するようなことが書いてあった‥)そして、祈ろうとおもう。
by beads-mici | 2012-03-17 18:52 | 3.11~ 震災そして原発のこと
<< そして命はつづく‥ 「ふくちゃん」‥さよなら。 >>